ここで待ってます

喜怒哀楽のなぐり書きですが。

Aの思い出

もう数年前のことになります。

長年勤務していた職場が遠方に移転することとなり、私自身ももうこのへんでいっかな、と思うこともあって退職したのです。夫というスネもあり、暮らしに困窮するということもなかったので、半年ぐらいは無職生活を満喫していたのですが、このへんで菜々子のゴハン代ぐらいは稼がないとなということで新たな職を探したのですね。

どうせなら、今まで経験したことのない労働をしてみたい、と無謀にもこのオバサンは思ったのです。デクスワークではなく、体を動かせるものならなんでもいいと。見つかったのが、今やその名前を知らない人の方が少ないでしょう、ネット通販最大大手の知名度を誇る「A」(仮名・・・ってこれそのまんまじゃないか!)。

辺鄙な湾岸地域の倉庫街に、新しくそこの物流センターがオープンするというので、大々的に人員募集をしていたのです。さっそく私はその広告を出していた派遣会社に登録をしたのですが、そこでちょっとびっくりしたことがひとつ。

ホワイトカラー(事務職とかですね)、ブルーカラー(肉体労働、ガテン系ですね)というのはごく普通に聞きますけども、私は長らく販売職をしてましたんで、登録時に係の人にそう言ったんですね。そしたら「あ、オレンジカラーですね」と返されたんですよ。そういう呼び名があるとは知りませんでした。じゃイエローだのグリーンだの、それこそブラック(なんか嫌な感じ)もあるんでしょうか。パイロットだのCAさんなんかはプラチナカラーか?(そういう人はそもそも派遣会社に来ないね)

まあとにかく「A」の倉庫で働くことになったわけです。

「えっ!?Aぇ~~~~?アンタ体ボロボロになるのと違う!?」と友人どもに心配されましたが、知らないというのは強いもので、私はワクワクしながら勤務についたのでした。

なんか、仕事に就く前に「Aで知ったことはSNSなんかに書いちゃダメだかんね」とかお達しがあったようにも記憶しているんですが、もうそこの倉庫はありませんし(仮だったので移転した)そこで経験した私の気持ちを書くだけですから、かまわないと思います。(いや、読み返してみたら気持ちより作業内容でした。いいやもう)

「A」の正規社員様は別格の存在です。私たちのようなシモジモの労働者はめったに口をきいてはいけないことになってます(嘘です。でも雰囲気はそんな感じでした)。

あと、あそこは徹底した「成績主義」でした。まるで機械かなにかのようにミスなく、早く、効率がいいのがすべてなのです。

私がやっていたレシーヴ(配送されてきた段ボールの商品をひとつずつスキャン、登録して棚入れに回す)の部署では、午前、午後の2回にわけてホワイトボードに「成績」が書きだされるのです。作業員のIDナンバーと顔写真が貼られた欄に、スキャンできた商品の数、入力にかかった時間、ミスの数、分ごとの効率(だったかな?)が、数字となってずらずらと発表されるわけです。これはなかなか恐ろしいものがありますよ。トップの人はいつでもトップ。私のような鈍くさいのはいつでも下のほうでした。

これが提示されるのはその部署内だけでしたが、ピッキング(棚から商品を取ってスキャンして配送に回す)なんかはエグエグでしたねぇ。だって皆が通る通路にでかでかと貼られるんです。指導員の寸評コメント入りで。「ミスが目立ちます!」とか、「派遣会社に連絡します(げ、クビ?)」とかあったなぁ。いや~、確かにあれだけハッパをかけられお尻を叩かれれば、ミスも減り、作業は早くなりますが、これに耐えるにはなかなかの強メンタルでないと・・・・。

もうね、アダルト系のアレだのコレだのの商品なんかわんさか来ますからね。最初はもう身もフタもない外箱の写真や絵に「げ」とか「ぐ」とかなってましたが、すぐ慣れます。消費期限などの細かい入力もないし(ちなみに避妊具にはあります。面倒でいやでした)、箱もスキャンしやすく効率がいいので、私は好きでしたよ(好きだったのか!)。

母の短期入院がありましたんで、私は7か月ぐらいで辞めましたけど、それでも派遣会社からは「長く続きましたねぇ~」と言われました。皆そんな早く辞めちゃうんですな。まあそれもそうか、あれじゃなあ・・(しみじみ)。

これを読まれた皆さまも、きっと「A」で楽しくお買い物をし、商品の到着を心待ちにすることがあるかと思います。商品がお手許に届いた際には、そこには、汗と涙に濡れたたくさんの人の手が関わっておりますことを、1秒間でも頭に浮かべていただけたなら幸いです。

(あっ、ゴッツイ手袋必須ですからね、汚れてませんから商品はっ)

 

でも、面白かったですよ、私は。

もう一度やれといわれたら「御免被る」としか返せませんのですが(笑)。